かつては若年層に人気のSNSとして知られたTikTok(ティックトック)は、今や幅広い世代に普及し、日常生活やマーケティングに欠かせない存在となっています。しかし、その一方で、プライバシーや国家安全保障のリスクを含むさまざまな問題が指摘されています。この記事では、TikTokの危険性について深掘りし、各国の対応も含めて解説します。
TikTokとは
TikTokは、中国のByteDance(バイトダンス)社が運営するショート動画共有プラットフォームです。
- 起源:2016年、中国市場向けに「抖音(ドウイン)」として提供開始。
- グローバル展開:2017年から国際版TikTokとして提供され、2018年にはSNS「Musical.ly」と合併。
- 成長の速さ:サービス開始からわずか4年でユーザー数10億人を達成。FacebookやInstagramの倍速での成長を遂げました。
TikTokの危険性
1. 中毒性の高さと不適切コンテンツへの接触
- 平均使用時間:多くのユーザーが1日あたり90分以上をTikTokに費やしており、中毒性が高いとされています。
- 精神的健康への影響:児童を対象とした有害コンテンツが拡散し、心の健康に悪影響を及ぼす懸念もあります。
- 米国議会での追及:TikTokは、未成年に対する有害コンテンツの拡散を防止する責任を問われています。
2. プライバシー侵害のリスク
TikTokは、子供のデータ保護を無視したとして英国で約1600万ドルの罰金を科されました。
- 児童データの不正使用:13歳未満の子供に親の同意なしでアカウントを提供。
- ユーザーデータの不適切な使用:TikTokの収集する膨大なデータは、広告ターゲティングに使用されるほか、誤用されるリスクがあります。
3. 国家安全保障へのリスク
TikTokはByteDanceを親会社とし、中国政府の影響下にあるため、国家安全保障上のリスクが指摘されています。
- 米国や欧州の禁止措置:政府職員のデバイスからTikTokを削除するよう通達されており、インドでは完全禁止されています。
- 選挙介入の懸念:TikTokが誤報の拡散や世論操作に利用される可能性があるとされています。
4. 中国政府との関係への不安
中国の法律により、企業は政府の要請に応じてユーザーデータを提供する義務を負っています。
- 監視と操作の懸念:TikTokが中国政府にデータを引き渡し、ユーザーが見るコンテンツを操作するリスクがあります。
- 企業へのサイバー攻撃:中国系ハッカー集団によるサイバー攻撃も懸念されています。
5. 仕事とプライベートの垣根が曖昧になるリスク
多くの人が仕事とプライベートの両方で同じデバイスを使用しているため、TikTokは企業の機密情報にアクセスする危険性があります。
- IoTデバイスへの脅威:職場で使用されるデバイスのセキュリティが脅かされ、サイバー攻撃の入り口になる可能性があります。
各国のTikTok対応状況
アメリカ
- 政府デバイスでの禁止:連邦政府機関に対し、30日以内にTikTokを削除するよう指示。
- 売却または禁止法案:TikTokを米国企業に売却するか、アプリ配信を禁止するかのいずれかを選択するよう求めています。
欧州連合(EU)
- EU機関での使用禁止:欧州議会と欧州委員会がTikTokの使用を制限。
オーストラリア
- 政府デバイスからの排除:セキュリティ上の懸念から、連邦政府のデバイスでTikTokを禁止。
インド
- 完全禁止:2020年以降、国家安全保障上の理由でTikTokを全面禁止。
TikTokのセキュリティ対策と企業の対応
1. 従業員の利用制限
- 企業は職場のデバイスでTikTokを使用しないよう指導することが重要です。
2. セキュリティ教育の実施
- サイバーセキュリティに関する教育を徹底し、従業員が自らの行動がもたらすリスクを理解する必要があります。
3. デバイス管理の徹底
- IoTデバイスやモバイル端末へのアクセス制限を行い、不正なアプリのインストールを防止します。
まとめ
TikTokはエンタメ性が高く、多くのユーザーを魅了する一方で、プライバシー侵害や国家安全保障上のリスクが取り沙汰されています。特に中国政府との関係性が懸念され、各国ではTikTokの利用を厳しく制限する動きが広がっています。
TikTokの利用を続ける際は、アプリのプライバシー設定を見直し、不必要な情報共有を避けることが推奨されます。また、企業や公的機関においては、セキュリティポリシーの強化が欠かせません。安全なSNS利用のために、TikTokに潜むリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。