テレグラム(Telegram)は、クラウドベースのメッセージングアプリとして世界中で利用されていますが、その一方で、匿名性の高さから犯罪組織によっても悪用されることが少なくありません。今回は、テレグラム(Telegram)の基本機能、セキュリティ対策、利用実例、そして注意すべき悪用リスクについて詳しく解説します。
テレグラム(Telegram)とは
テレグラム(Telegram)は、無料で利用できるメッセージングアプリであり、次のような特徴を備えています。
- セキュリティ機能: テレグラム(Telegram)では、音声通話とビデオ通話にエンドツーエンド暗号化が適用されており、プライベートチャットとして「シークレットチャット」が利用できます。また、ユーザーはいつでも送受信したメッセージを削除することも可能です。
- 迅速なメッセージ配信: 弱いモバイル接続でもメッセージがスムーズに配信されるため、通信状況の悪い地域でも利用されています。
- クロスプラットフォーム対応: スマートフォンやPC、Webブラウザーからアクセス可能で、会話はデバイス間で同期されます。
- 大規模なグループチャット: テレグラム(Telegram)では、最大200,000人のメンバーを持つグループが作成可能です。
- 自動ボット: 支払いやスケジュール管理など、さまざまなタスクを実行するボットを活用できます。
- 編集機能とカスタマイズ: 写真やビデオの編集、アニメーションステッカーや絵文字の追加、テーマの変更が可能です。
2013年にニコライ・ドゥロフとパベル・ドゥロフ兄弟によって設立されたテレグラム(Telegram)は、現在はドバイを拠点とするTelegram FZ-LLCが運営しています。2024年8月には、同プラットフォームの創設者であるパベル・ドゥロフ氏がフランス当局に逮捕される事件が発生しましたが、これはテレグラム(Telegram)のセキュリティ管理や違法行為の防止対策に関する問題が一因とされています。
テレグラム(Telegram)の主要機能
- シークレットチャット
シークレットチャットはエンドツーエンド暗号化により、第三者のアクセスが防がれます。この機能は、テレグラム(Telegram)サーバーには保存されないため、情報の漏洩リスクが低いとされています。また、メッセージの自動消去タイマーを設定することで、指定した時間経過後にメッセージが消去されるため、高度なプライバシーを実現しています。 - クラウドベースのストレージ
テレグラム(Telegram)は、クラウドにチャット履歴やメディアファイルを保存し、複数のデバイス間でのデータ同期を実現しています。これにより、ユーザーはデバイスを切り替えても、常に同じ会話やファイルにアクセス可能です。 - 2段階認証(2FA)
テレグラム(Telegram)は、電話番号と認証アプリを組み合わせた2段階認証を導入しており、不正アクセスのリスクを低減しています。 - 大容量のファイル共有
最大2GBのファイルを送信できるため、仕事や学習などさまざまな用途での利用に対応できます。
テレグラム(Telegram)の人気の理由
テレグラム(Telegram)が人気を集める理由には、以下の要因が挙げられます。
- セキュリティとプライバシーの高さ
現在のデジタル時代では、情報漏洩やプライバシー侵害の懸念が増大しており、テレグラム(Telegram)はこうした懸念に対する安全なメッセージングアプリとして位置づけられています。シークレットチャットや自動消去機能によって、高度なプライバシー保護が可能です。 - 多様なコミュニケーションチャネル
テレグラム(Telegram)は、個人間のチャットだけでなく、グループチャットやチャンネル機能をサポートしており、企業や組織、コミュニティにとって便利なプラットフォームです。特にスーパーグループは最大200,000人までの参加が可能で、大規模なイベントやコミュニティ運営に最適です。 - クロスプラットフォームアクセス
テレグラム(Telegram)は、スマートフォン、タブレット、デスクトップ、Webブラウザなどさまざまなプラットフォームで利用でき、ユーザーの利便性を向上させています。 - 開発者向けオープンプラットフォーム
テレグラム(Telegram)はAPIを提供し、開発者がサードパーティアプリやボットを作成できるようになっています。このオープンなアプローチにより、ユーザーはさまざまな機能やサービスを利用できるだけでなく、プラットフォームの拡張が進んでいます。
テレグラム(Telegram)の利用とセキュリティリスク
正当な利用事例
テレグラム(Telegram)は、正当な目的でも幅広く活用されています。特に、監視が厳しい国々では、自由なコミュニケーションツールとしての利用が進んでいます。
- 情報共有
監視体制の厳しい国々では、自由なコミュニケーションが難しいため、匿名性の高いテレグラム(Telegram)が反体制運動などで活用されています。特にアラブの春以降、イランやエジプト、ロシア、ミャンマーなどでの利用が拡大しています。 - 内部告発の受け付け
匿名性が高いため、内部告発の受け付けにもテレグラム(Telegram)が活用されています。米国のニュースメディアや消費者団体は、テレグラム(Telegram)を利用して安全な情報提供を受け付けています。
悪用事例
テレグラム(Telegram)は犯罪組織にも利用されており、以下のような悪用事例が報告されています。
- 闇バイト募集
高額報酬を提示する「闇バイト」募集が、テレグラム(Telegram)上で行われるケースが増えています。これらの闇バイトは、通常の求人サイトではなくSNSや掲示板で公開されており、主に「運ぶだけ」「電話をかけるだけ」といった曖昧な内容の求人が特徴です。 - 薬物取引と違法サービス
国際的な薬物取引や違法ポルノの取引においても、テレグラム(Telegram)が悪用されています。シンガポールや台湾などでは、電子タバコや処方薬の販売、性的サービス提供のためのチャンネルやグループが摘発されています。 - サイバー攻撃の犯行声明
政治的な抗議を目的とするハクティビストグループが、テレグラム(Telegram)を利用して犯行声明を発表する事例もあります。2024年10月の衆議院議員総選挙時には、日本国内の公的機関に対するDDoS攻撃が行われ、ハクティビストグループ「NoName057(16)」がその犯行声明を発表したことが注目されました。